小学館ライトノベル大賞
第3回小学館ライトノベル大賞

ゲスト審査委員 田中ロミオ  応募総数 606本

大賞
『あやかしがたり』 渡 航
ガガガ賞
『その日彼は死なずにすむか?』 小木君人
優秀賞
『クイックセーブ&ロード』 鮎川 歩
『今日もオカリナを吹く予定はない』 竹本源五郎
審査員特別賞
『邪神大沼』 相内 佑

(敬称略)


ゲスト審査員講評 田中ロミオ

 多くの作品は、手抜かりなくまとめた優等生的内容か、一芸に秀でた作風かのいずれかに分かれます。特に小説大賞などでは書き手が様々な戦略を練る結果、この傾向は特に強くなるのではないでしょうか。
 今回、初の審査員という大任を務めるにあたり、どちらに才能ある書き手がいたとしても決して見落とすまいという方針で個々の応募作を拝読いたしました。
 さて最終的に絞り込まれた五作品の傾向を見てみると、今回の審査では優等生的作品が多く生き残ったように感じました。特に本来なら発展途上にあるはずの若い書き手であってもそつなくまとめてくる、というパターンが目立っていたようです。   「あやかしがたり」「クイックセーブ&ロード」「その日彼は死なずにすむか?」はいずれも技巧が感じられる作品です。とりわけ「あやかしがたり」は達者な筆致と高い完成度を誇り、作者の年齢を鑑みると同じ物書きとして「ちょっと今のうちにどうにかしておきたいな」と暗い情念を抱かせるものがありました。構成・考証ともにしっかりしており、文章も破綻なく、ときおり鋭い一文を繰り出す筆力もあります。総合力では文句なしに一番でしょう。私はこの年齢で同じ水準の物は書けませんでした。この審査の流れで本作が上位入賞することにはとても説得力があります。
 対して「邪神大沼」「今日もオカリナを吹く予定はない」は、上記三作とは若干異なるタッチで最終選考まで生き残りました。突出した完成度があるわけでもなく、減点法では評価に伸び悩む作風ですが、ノリを大事にして最近流行の「会話芸」をものにしているという印象でした。特に「邪神大沼」はこういった小説大賞で普通求められるであろう貫禄こそないものの、平易な文体で読みやすく、いわゆるライトな読者向きの読み物として非常に優れていると感じます。とぼけた味わいのユーモアセンスも他の作品にはないもので、「こいつも近々どうにかせんとな…」と嫉妬の炎を燃やすとともに審査員特別賞として推すに適していると判断しました。
 最後になりましたが受賞者の皆さん、入賞おめでとうございます。審査員のひとりとして、皆さんのご活躍を(嫉妬まじりで)見守っていきたいと思います。


編集部講評

 第3回を迎えた小学館ライトノベル大賞。たくさんのご応募をいただき、多くの力作が編集部に集まりました。ありがとうございました!
 今回から原稿ページ数の規定が長編のみに変更され、短編の募集がなくなりましたが、長編作品数としては過去最多の応募作品が集まりました。また、ゲスト審査委員には田中ロミオ先生を迎え、編集部がより主体的に審査に関わる形で、選考が行われました。
 多くのレベルの高い作品、ジャンルにとらわれないオリジナリティ溢れる作品の中から、厳正なる審査のうえ、大賞を含む五作品が決定いたしました。いずれも、受賞にふさわしく、新しい才能を感じさせる作品です。5作品はそれぞれに個性的で、バラエティに富んだラインアップとなりましたが、ガガガ文庫というレーベルの方向性、特色がより表れた選考結果になったのではないかと思います。
 受賞作品は、5月刊のガガガ大賞作品を皮切りに、随時発刊される予定です。また、第4回大賞の募集も昨年10月より既に始まっています。9月末の締切を目指し、現在執筆作業に入っている方もいるかと思います。多くの作品が集まりますことを期待して、編集部一同、楽しみにお待ちしております!




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