小学館ライトノベル大賞

ゲスト審査委員 渡 航先生からのコメント

これまで錚々たる方々がゲスト審査員を務められてきた中で、私のような若輩者がやらせていただいていいのでしょうか。もっと他に相応しい方がいらっしゃったのではないでしょうか。どなたかにお願いして断られた結果、渡 航にお鉢が回ってきたんじゃないでしょうか。ピンチヒッターというよりこれは高校野球でいうところの思い出当番なんじゃないでしょうか。私が審査員で本当にいいんでしょうか。不安はぬぐえませんが全力でことにあたらせていただきます。全力すぎて原稿遅れるまである。

ゲスト審査員を務めさせていただくにあたり、私が期待していることは、情熱ある魂と冷静な技巧によって書かれた作品に出会うことです。キャラ萌えでもルサンチマンでも自己顕示欲でもいい、そうした魂の叫びともいうべき何かを確かな実力とテクニックでもって形にしたものを見たいと思っています。荒削りでもいい、とは言いません。文章力、構成力、キャラクター、インパクトその他諸々……。己のすべてをつぎ込んだ絶対的な自信のある洗練された渾身の作品をぜひ送ってきてください。 かつて、私も就職活動の傍ら、内定がまったく無い状態で応募作『あやかしがたり』をそうした意気込みで書きました。「っべー、超出来いいわー。これ大賞とっちゃうなー。売れたらアニメ化して声優さんと結婚までワンチャンあるわー」とか思ってたんだよ! 当時の俺は! 馬鹿じゃねぇの! 就活ちゃんとやれよ! 過去の自分を引き合いに出しましたが、それくらいの意気込みと覚悟のある作品を読みたいと思っています。

一応私がゲスト審査員ではありますが、渡 航の作品や私の趣味嗜好を意識する必要性はまったくありません。同じ作家は二人いらねぇ! 『あやかしがたり』も二ついらねぇ! もうたくさんだ! 応募者の皆さんが相手にするのは私ではなく、その先にいる方々です。編集部や渡 航の好みそうな作品ではなく、あなたが一番読ませたい相手、読んでほしい人、つまりは「読者」と「市場」に向けた作品を送ってきてほしい。自身のすべてをかけて、読者に、市場に、そして世に、己が価値を問う。それが新人賞なのではないでしょうか。

応募原稿を通して、その作者の可能性を感じ取れるような作品が読めることを期待しています。

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