応募総数1328本の中から厳正なる審査の結果、今回は5作品が受賞!! 刊行予定日も決定!!(ゲスト審査員:広江礼威)
ガガガ大賞(賞金200万&応募作品での文庫デビュー)
『平浦ファミリズム』 遍 柳一
7月19日ごろ発売予定
母を亡くした高校生の平浦慶一。残されたのはトランスジェンダーの姉、引きこもりの妹、変人フリーターの父。そんな家族の人生模様。
ガガガ賞(賞金100万&デビュー確約)
『ひきこもり姫を歌わせたいっ!』 水坂不適合
7月19日ごろ発売予定
超絶歌下手男子・蒼山礼人。ロックバンドの甲子園で優勝を目指す彼が目をつけたのは、天使の歌声を持つ引きこもり姫で!?
優秀賞(賞金50万&デビュー確約)
『その過去にイピカイエー、この結末にマザーファッカー。』 谺
6月20日ごろ発売予定
二足歩行兵器の搭乗者育成学校にテロリストの猛威。整備士として学園を訪れていた稟次に生徒たちの命運は託された!
優秀賞(賞金50万&デビュー確約)
『翡翠と琥珀』 酒井田寛太郎
5月18日ごろ発売予定
性格に少々難アリの啓介は純真な先輩・雪穂と出会い、学内で起こる様々な事件を一緒に解決していくことになるが……。
審査員特別賞(賞金30万&応募作品での文庫デビュー)
『世界の終わりに問う賛歌』 白樺みひゃえる
7月19日ごろ発売予定
魔法社会のエネルギー危機に端を発する、次世代型発魔炉の開発プロジェクトをめぐる受難と救済の物語。
(敬称略)
ゲスト審査員講評 広江礼威
5本それぞれバラエティーに富み、違った形の作品を堪能させていただきました。荒削りなもの、こなれているもの、また次作品ではうまくやっていきそうだと期待がもてるものそれぞれです。理知的だけど人間関係があまり上手ではない主人公が、周囲の助けを得て世界を開いていく、という傾向の作品が多いのは時代性によるものでしょうか。そういう部分が垣間見えるのも面白かったです。
『平浦ファミリズム』は、どことなく少女漫画っぽい繊細な手触り。多様性を尊重し個々の視点をとても大事にしているのが見て取れます。人間関係を厭う主人公が登場人物たちを救い、自らもまた彼らに助けられる展開は好印象でした。ラストに母親の述懐を持ってきたのも綺麗。
『その過去にイピカイエー、この結末にマザーファッカー。』は、わかりやすいテロリスト対決ものでAIをあえて情緒的に書いているのが面白い。しかし、第二次大戦で日本が勝利した世界のディティールはもっと凝らないと説得力に欠けるかも。さらに、プロットの組み立てがまんま『ダイ・ハード』なのと、敵の頭の悪さが作為的なのが若干興を削いでしまうところも。また、欲を言えば二人のヒロインがあまり干渉し合わないので、そこに生まれる化学変化も見たかったです。
『ひきこもり姫を歌わせたいっ!』は、文章がスムーズで軽妙、大変読みやすかったです。クライマックスのライブシーンはとても臨場感に溢れていて漲ります。折角音楽ベースの話なので、有名曲のナンバーを小道具として使ってみたらどうか?と感じながらも、全体としては、起承転結がとてもスッキリしていて創作のお手本のようです。ですが、それが故にオチは少し物足りない部分もありました。主人公は才能がなくてもいいんじゃないかとも思いますが、お客さんのために目配せするかどうかは難しいところ。
『翡翠と琥珀』は、落ち着きのある作風は好感がもてます。推理は小粒ながら楽しく読めました。全体的にキャラが薄く、主人公が嗜んでいる格闘技と鉱石が推理から乖離してるのが気になります。キャラの特性なので、うまく推理に噛ませられればもう少しキャラの説明ができるんじゃないかと。ラストの余韻はもう少しあるといいかも。
『世界の終わりに問う賛歌』は、痛みがパワーを生む、その痛みを引き出すための力を必要とされるという着想はとても面白いです。試行錯誤から成果に行き着くまでのプロセスが丹念で良いのですが、反面、次のアクションに入るまでが少し退屈かも。若干設定が煩雑で、その説明に振り回されてる感はありますが、それを補って余りあるコンセプトの愉快さに惹かれました。ただ、お客さんは全体の雰囲気で把握するので、もっと削り込んでも良かったと思います。クライマックスの盛り上がりは好きでした。毒とウィット、悲しみが共存する楽しい作品です。
審査員特別賞については、個人的に着想が琴線に触れた、この『世界の終わりに問う賛歌』に贈りたいと思います。
以上、5作品を個人的な観点から評価させていただきましたが、現在、それぞれの受賞者の方々には担当編集者がつき、改稿がなされていると伺いました。さらにイラストがつき書籍化された時に、各作品がどのような変化を遂げているのかとても楽しみです。
編集部講評
第11回小学館ライトノベル大賞・ガガガ文庫部門に多くの作品をご応募いただきまして、ありがとうございました。
今回よりWeb投稿での募集を開始したこともあり、総数1328本と過去最多の応募作数をいただきましたこと、深く感謝いたします。
今年はゲスト審査員に、漫画家の広江礼威先生を迎え、編集部と先生による厳選な審査の結果、ガガガ大賞1作、ガガガ賞1作、優秀賞2作、審査員特別賞1作の計5作品を決定いたしました。
今年の応募作の傾向は、ライトノベルの枠にとらわれない、あるいはあえて今の流行のジャンルにカウンターをあてることを狙った挑戦的な作品が多かった印象があります。Web投稿による募集が始まり、間口を広げたこともその一因にあるかと思いますが、ライトノベルというジャンルがそういった時代を迎えているのかもしれません。
今回受賞した5本の作品はいずれも新たな可能性を感じさせるものでした。受賞作には担当編集がつき、推敲と改稿をへて、新しい作品として5月から刊行されていきます。応募いただいた皆様にも、ぜひ発刊を楽しみにしていただきたいと思います。
また、すでに第12回の募集も始まっており、Web投稿での募集も引き続き行っています。今年10周年を迎えますガガガ文庫とともにこれから先へと進んでいける作家さんと出会えることを、編集部一同楽しみにお待ちしております。