第13回小学館ライトノベル大賞
最終結果発表!!

応募総数1082の中から厳正な審査の結果、今回は5作品の受賞が決定!! 刊行予定日も発表!!(ゲスト審査員:浅井ラボ)

ガガガ賞&審査員特別賞(賞金150万円&デビュー確約)

『僕がウラシマトンネルを抜ける時』 八目 迷
7月18日ごろ刊行予定!
“年を取る代わりに、欲しい物が何でも手に入る”都市伝説のトンネルを発見した主人公は、ある目的のため調査を開始する。

ガガガ賞&審査員特別賞(賞金150万円&デビュー確約)

『クラスメイトが使い魔になりまして』 鶴城 東
5月17日ごろ刊行予定!
やる気なしなクズ男子が意識の高い天才美少女を使い魔に? 主従関係からはじまる、マジカル・ファミリア・ラブコメ!

優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)

『リベンジャーズ・ハイ』 呂暇郁夫
6月18日ごろ刊行予定!
砂塵という有害物質が蔓延する偉大都市。復讐に生きるチューミーは出自も正反対の加々美とバディを組むことに。手に汗握るSFアクション!

優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)

『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月』 裕夢
6月18日ごろ刊行予定!
主人公は、超絶リア充。――審査会も大紛糾!? 生まれるべくして生まれた、新時代型・青春ラブコメ!

優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)

『史上最強オークさんの楽しい種付けハーレムづくり』 月夜 涙
7月18日ごろ刊行予定!
最強のオークになって、可愛い女の子たちをはべらせてやる! 痛快快感ファンタジー!

※「大賞」は該当作品なし
(敬称略)

ゲスト審査員講評 浅井ラボ

最初、審査員の依頼を受けたとき、ははは、おもしろい冗談だなと思いました。 しかし何度か言われているうちに確定事項と発覚。「ところがどっこい……夢じゃありません……現実です……これが現実!」とカイジの一条に言われている感じになりました。
人の将来を決めるかもしれない責任の重大さと、自分になにかを判定する見識や資格があるかとすると、疑問が出てきます。足りないならば、四日間審査だけをする真剣さで補うことにしました。
が、これが沼でした。やってもやっても終わらぬ一万六千文字に及ぶ分析を出したので、なんとか最低限の誠実さと客観性を保つことができたのではないでしょうか。編集部と編集長との数日にわたる議論も、審査の大きな助けと公平性の基盤となっているはずです。
多くの最終候補作品のなかで受賞作を選んだ基準は、センス、キャラクター、ストーリー、メッセージ、ユーモア、テーマ、文章の七項目の評価を合計する総合点数方式としました(おそらく娯楽作家として大事であろう要素順で重み付けしています)。
総合点の高さも大事で分かりやすいのですが、それらの上を行く個人的な基準として、作品にある優しさや気高さ、倫理性を賞の当落の差としました。
結果として、異例のW受賞も発生しております。

◆大賞 該当なし

◆ガガガ賞&審査員特別賞
『僕がウラシマトンネルを抜ける時』
はっきり言うと、送る賞と審査員を間違っていると思います。それほど人への優しい眼差しと、平凡ゆえの邪悪とは言いにくい邪悪さをも描き、端正な作品となっています。登場人物がこう考え、こういう言動になる、という精密な心理描写は大きな美点です。
ライトノベルというジャンルで久しく見ることなく、脳の辞書から消えていた、品性という単語を急に思い出しました。
よくぞ投稿先を間違えてくれたと思います。大賞としても良かったのですが、後述の理由で、異例ながらも審査員賞とのW受賞とさせていただきました。

◆ガガガ賞&審査員特別賞
『クラスメイトが使い魔になりまして』
魔法学園ラブコメにおける笑いに、冷静さが同居する作品でした。さらには、意外な展開で別ジャンルになっていきながら、なお元のジャンルのままである欲張りセットです。
下手な作者は読者を笑わせようとしますが、この作品では登場人物が他の登場人物を笑わせようとしています。いわばコメディ的リアリティとでもいう感覚は得難い才能だと思います。
……と、これだけでは、上手いですね、で終わります。ですが、このジャンルであってなお、作品からは安易な弱肉強食や邪悪な願望を否定する、一点の気高さが見てとれます。その一点の要素とこれもまた後述する理由で、審査員賞とのW受賞としました。

◆優秀賞
『リベンジャーズ・ハイ』
こんな感じで表現したいんだ、という熱量を持つ作品。昨今では珍しくアクションシーンが描ける、描こうとするだけで評価したく存じます。
現状では、こんな感じで~、と迷っている膨大な熱量の方向を定めると、より上の作品が浮かびあがってくるでしょう。
この作品や他の候補作にも多く見られた過剰さは、短期的には欠点と取られやすいですが、長期的には大きな器になりえるのではないかと思っております。思索と研鑽と経験を器に詰めたなら、小器用さではたどりつけない独自のものになれるのではないかとも考えております。 経験の最初の機会となればと優秀賞としました。

◆優秀賞
『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月』
問題作です。出版にありがちな惹句としてではなく、本当の問題作で、編集部でも評価が分かれ、私も評価を定めにくい作品でした。作中の無邪気な邪悪さと暴力性という暴投は、大きな誤解を招くと感じました。
一方で新人さんが小賢しさで「今って、こういう作風が受けるんでしょう?」と商業出版を意識しすぎると、小さくまとまります。そして最初の枠から生涯出なくなることが多いです。
算盤勘定は後でいくらでもできるので、新人さんは最初くらい全力で暴投していいし、するべきでしょう。いずれ制御が必要にしても、まず受け止める懐の深さが新人賞にだけはあっていいはずです。
暴投を単なる蛮勇で終わらせるか、慈愛とできるか、未知数さを含めて優秀賞としました。

◆優秀賞
『史上最強オークさんの楽しい種付けハーレムづくり』
異世界転生チーレム系の定番で始まるのですが、後半は主人公と作者が1ページごとに急激な成長をしていくのが見て取れました。最後はもう、欲望という厳しい教義と戒律に殉ずる、一種の殉教者にすら見えてくる精神性を評価しておいたほうがいいでしょう。 この作品においては、成長速度をどこまでかと測ることが大事でしょう。他人の可能性を評価するなど、どう考えてもギャンブルです。しかし他人が賞金を出すギャンブルだから私の懐は痛まない、と優秀賞にしてみました。

◆総評
審査員である私と編集者各員と編集長という全員の評価が分かれ、当落と受賞で長い議論が続いた賞です。
その結果として、最終候補作のうち、青春SF小説、魔法学園ラブコメ、近未来アクション、問題作、異世界転生チーレムと、すべてジャンルの違う作品が受賞となりました。

最初は、端正な『僕がウラシマトンネルを抜ける時』と王道娯楽的な『クラスメイトが使い魔になりまして』のどちらか、または両作品を大賞とするべきだとしていました。
そうしなかった理由は、両者にそれぞれセンスがあり、冷静さを持ち、または上手いことが絡んできます。
読んでしばらくたつと、センスや冷静さや上手さといった美点が冴えた結果として、執筆を通して見出すしかない感情や価値観や倫理性の提示といった、一種の野蛮さや暴力性に欠けると気づかされてしまいました。
美点ゆえに、読んでいる人の精神や信条や倫理観が傷つかないのです。出血しないから、読書によって自己を作りかえることが発生しにくくなっています。
これらを同時に要求するのは厳しい基準で、世に流通する職業作家とその作品の99%もできていません。普段なら、娯楽作品は「わーおもしろいな」で気づかないですみます。
上手いがゆえに読者にその先を気づかせてしまうこともあるのだと、両受賞者にはご了承いただきたい。
一方で、両作品が改稿、さらには続く作品によって、私が幻視した理想像すら乗り越えることを期待しております。

次に、方向性の違う二作品に上下をつけることは「この路線が正解で、あの路線は次点となる」と投稿者の方々に誤解させ、賞の方向性を狭める危険性がある、と私なりに考えました。両作者がもし大賞に固執していたなら、私ではなく同時代に相手がいたことを恨んでください! 
そこで異例ではありますが、私からの提案と編集部の協議の結果、ガガガ賞と審査員賞のW受賞者を二人としました。 審査の紛糾と事情で大賞とならないなら、賞の数で報いましょうということです。審査が甘いのか厳しいのか分かりにくいのですが、甘辛いおせんべいのような受賞だと思ってください。
そして刊行時の両作品を読み比べていただければ、賞審査関係者たちの苦慮をご理解いただけるのではと思っております。同時に優秀賞の三作品が投稿時からどれだけ変化したかも、ご確認いただければありがたく存じます。
今後も投稿者の方々の自由な発想からの、他にはない作品を賞に届けていただければ、一審査員として、また作家の前の一読者として幸いに存じます。
今回たまたま最終候補に届かなかった、受賞とならなかった方も、再び挑戦していただければありがたく思います。

結びとして、一連の審査員の特殊信条や編集部の事情、予選での運不運や偶然はあっても、結果は結果です。受賞を各受賞者の好機としていただきたいです。
舟木一伝斎の「一生に一度だけは自己の運命を覆し得る場に~」という言葉を引用しようとして、あれは最後が悲惨だからやめておきました。やめませんでした。

よく言われるように、受賞はスタート地点でしかありません。現時点での評価は現時点のものです。優秀賞だろうが大賞だろうが審査員賞だろうが、受賞者の成長や成熟、将来をまったく保証しません。未来予測ができたら、今頃私は株の仕手戦で大富豪になっています。 受賞者の方々のこれからには、歓喜と希望の他に、苦難と絶望が山盛りでやってきます。なんだかんだと折れずに進み、ご活躍されることを心より願っております。
将来のどこかで「あの大作家を受賞させた審査員は見る目があったな」と言われたいので。
それはどれだけ早くてもいいです。

編集部講評

第13回小学館ライトノベル大賞・ガガガ文庫部門に多くの作品をご応募いただきまして、ありがとうございました。
前回に引き続きWeb投稿での募集も行い、総数1082本と、今年も1000本を超える応募作数をいただきましたこと、深く感謝いたします。

今年はゲスト審査員に、浅井ラボ先生を迎え、編集部と浅井先生による厳選な審査の結果、ガガガ賞と審査員特別賞のW受賞2作、優秀賞3作の計5作品を決定いたしました。

受賞した各作品の講評につきましては、浅井先生の講評に代えさせていただきますが、今回は、小説投稿サイト掲載作品からの応募作も多く、かつてないほどにバラエティ豊かな作品が集まりました。しかし、ライトノベルというジャンルの多様化が進んでいることを実感すると同時に、どこか既視感を覚える作品が多く見受けられたのも今回の特徴だったと思います。

今回受賞した5本の作品はジャンルもテーマもバラバラですが、それぞれに個性的で甲乙付けがたく魅力あるものでした。審査員特別賞が2作出るという異例もそのことを物語っていると思います。受賞作には担当編集がつき、推敲と改稿を重ねた上で、新しい作品として5月から順次刊行される予定です。ぜひ発刊を楽しみにしていただきたいと思います。

また、すでに第14回の募集も始まっており、Web投稿での募集も引き続き行っています。次回はどのような作品が集まるのか、編集部一同楽しみにお待ちしております。


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