応募総数1142作品の中から厳正な審査の結果、今回は4作品の受賞が決定!! 受賞作は2025年7月、8月ごろ刊行予定です!(ゲスト審査員:田口智久)
ガガガ賞(賞金100万円&デビュー確約)
『炒飯大脱獄』えるぼー
サイレンが鳴り、監視塔のサーチライトが少女を追う。ここは炒飯の監獄。解放条件は炒飯を千皿積むこと。お断りだ、脱獄だっ!
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『龍の翼の上で』大雪八重
魔族との戦争は終わった。勇者部隊の生き残り・ヴォルクが争いなき世界で己の生きる意味を探す――アフター戦記ファンタジー。
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『バーチャル美少女探偵と1万人のワトソン』塗田一帆
探偵系Vtuberは人任せ? 技術ガチ勢が挑む、謎解きエンターテインメント!
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『名もなき英雄たちへ告ぐ』宮下愚弟
命をかけて”希望”を届けろ。勇者ではなくても、世界を救うために。これは歴史には残らない、英雄たちの物語。
ゲスト審査員講評 田口智久
どの作品も意欲に富んでいて、何かを読者に伝え、残そうとする意志を強く感じました。それぞれ多角のテーマとそれに向き合った回答がきっちり描かれてあったのも印象的で、この先のライトノベルというジャンルを盛り上げる可能性を感じました。
◆炒飯大脱獄
今回の作品中では最もオリジナリティーと構成力があると思いました。
一見荒唐無稽なシチュエーションではあるけれど詳細かつ端的な描写がリアリティを付与しているように感じました。展開とテンポ感もよく、ギャグやコメディをドラマの中に織り交ぜる能力が高く「滑る」事もないので物語や世界観に没入できると感じました。
キャラクターのバックボーンは最低限にし、炒飯大学での現在進行形の話に終始したのも良かったです。
◆龍の翼の上で
ファンタジーとしてのディテールがよくねられていた事で作品のリアリティを上げる事に成功していると感じ、とても良かったです。
ヒロインの目的が地図を描くことという、ファンタジー世界を拡張しうる設定も物語を稼働させてくれていたと思います。
世界は龍の上に出来ている…というファンタジーでしかあり得ないスケール感と、「かもしれない」という想像の余地を残す締めくくり方はとてもロマンチックだと思いました。
主人公とした帰還兵がPTSDを克服する過程において、敵役の竜人が対話を求める様はとても現代的な落とし所になっていると感じましたし、良かったと思います。
◆バーチャル美少女探偵と一万人のワトソン
非常に現代的で、今描く意味のある設定と内容だったように感じます。集合知を使って解決していくという今までにない推理小説に出会えるかもという期待値はこの作品が一番でした。
しかし設定とテーマのキャッチーさとは裏腹に推理内容は力技が多く、依頼発生の段階からどういう結末が来るのかが見えやすかった点もあるように感じました。
それでも有り余るデジタル知識は遺憾無く発揮されVRの世界を誰もがわかりやすいエンターテイメントに仕上げていると思いました。
◆名もなき英雄たちに告ぐ
ファンタジー作品ではモブ扱いになりそうな人物を主人公に添えて、そんな名もない人が命をかけ世界を救う剣を勇者に届けにいくというプロットは非常に面白いと思いました。御伽話を語るように始まるのにも引き込まれます。
しかし、それは逆説的に御伽話のように展開させていなくては導入の意味を失うように感じました。冒頭と最後だけ御伽話を語っているような構成が本筋の意味を希薄化しているきらいはあるかと思いました。
とはいうものの、最後の戦いの手に汗握る展開や敵をいかにして倒すのかなどの構成はとても素晴らしいものがありました。
私自身、審査員という立場自体初めての経験で、なかなか重大な責任を伴うなと不安をはらみつつ頂いた原稿を拝読しましたが、読み始めるとどれも面白く仕事を忘れて読み耽ってしまいました。
まだ世に出ていない宝石の原石を見ているような素晴らしい時間でした。このような機会をあたえてくださった事に感謝します。
編集部講評
第19回小学館ライトノベル大賞は応募総数1,142作品となり、引き続き1000作品を超える応募作品数となりました。
小学館ライトノベル大賞の応募作品数は第15回以降、1000作品を超える応募数が続いております。ライトノベルの新人賞において小説投稿サイトを経由しての直接応募が一般的になってきている現在、そのような形態をとらない小学館ライトノベル大賞へ変わらず多数の応募をいただけているということは、大変ありがたいことです。
ご応募いただきましたみなさまに深く感謝いたします。ありがとうございました。
本年はゲスト審査員として、第13回小学館ライトノベル大賞《ガガガ賞》《審査員特別賞》受賞作『夏へのトンネル、さよならの出口』の劇場版にて監督・脚本を手掛けられ、近年では『BLEACH 千年血戦篇』にも監督・シリーズ構成として携わられている、田口智久氏を迎えました。そして編集部と田口氏との厳正なる審査の結果、《ガガガ賞》1作、それに準じて《優秀賞》3作の計4作品が受賞作として選ばれました。
受賞した各作品についての詳細は田口氏の講評にゆずりますが、最終選考に至るまでの編集部内の過程について記せば、さまざまに違った個性を見せる作品たちを前に、どのような基準で評価すればよいか、どの作品を選出するのか、編集部一同、それぞれに頭を悩ませました。結果として今回勝ち残った受賞作の面々は、編集部の各担当の評価がぶつかり合い、さらに編集部とはまた違った観点から作品を見てくださった田口氏の評価がぶつかりあった結果です。どの評価者が欠けても、いま発表されたような結果にはならなかったのではないかと思います。
今回受賞した4作品は、担当編集がついて推敲と改稿を重ねたうえで、7月から順次刊行される予定です。それぞれの個性でもって編集部に衝撃を与え、さらにそれを超えて、担当する編集者に「ぜひこの作品を担当させて欲しい」といわしめた魅力的な作品たちに、ぜひご期待ください。
また、最後になりましたが、すでに第20回小学館ライトノベル大賞も募集を開始しております。記念すべき第20回のゲスト審査員には、第13回小学館ライトノベル大賞《優秀賞》受賞作にして、本年テレビアニメ放送予定の『千歳くんはラムネ瓶のなか』の著者である裕夢先生をお迎えすることになりました。千歳くんを生み出した裕夢先生の力をお借りしつつ、引き続き新しい才能を発掘すべく、編集部一同で取り組んでまいります。