応募総数1310作品の中から厳正な審査の結果、今回は3作品の受賞が決定!! 受賞作は2026年夏ごろ刊行予定です!(ゲスト審査員:裕夢)
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『あくまでてんしです♡』前藤たんか
大好きなお兄ちゃんに近づく、5人のヒロインが誰か特定せよ! 主人公不在の革新的ミステリー・ラブコメ!
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『銃×石――ガンセキ』牛若 守
"不労"の採掘者が動き出す。親に売られた少女と手を組み、心を通わせながら繰り広げる圧巻のガンアクション!
優秀賞(賞金50万円&デビュー確約)
『メタル&プラスチックマイハニー99』ノすけ
「叶南ちゃんの脳を、俺にください」イカレた天才科学少年と、付喪神として再誕した少女、神×人のハイブリッドラブコメ!
ゲスト審査員講評 裕夢
今回で第20回を迎えた小学館ライトノベル大賞の激励コメントでも書かせていただきましたが、僕自身も第13回のときにこの賞でデビューし、いまもまだデビュー作をシリーズとして書き続けている身です。振り返れば商業作品として12冊を世に出したいまでもまだ、新しい原稿に取りかかるたび「小説の書き方なんもわからん」とうんうん頭を抱えていますし、書き終わったら書き終わったで「もう二度と書けないまぢむり……」と放心状態になっています。構成も、言葉選びも、文体も、それこそ行間の空け方ひとつとっても、どうすればもっと読者に届くのか試行錯誤の日々です。そんな自分が誰かの作品を評価したりする立場でないことは重々承知しつつも、今回はゲスト審査員をお引き受けした手前、形だけでもと講評を書かせていただきました。どうしたらもっと面白くなるかを考えてしまうのが作家の常なので、せめてなにか少しでも改稿のお役に立てる視点を提示できればと考えていたら長くなってしまいました、ご容赦を。いいと思った点も気になった点も挙げさせていただきましたが、指摘というほど偉そうなものでも批評というほどたいそうなものでもありません。先輩作家が飲み会の席で好き勝手に無責任なこと言ってる、ぐらいの感覚で読んでください。
『あくまでてんしです♡』
ラブコメをあえて「第三者視点」、お兄ちゃんのラブコメを見ている妹の視点で始めるというのは面白い試みだと感じました。ただ、現状ではとくに序中盤、この設定と登場人物の多さを扱いきれていない印象を受けました。5人のヒロインに二つ名をつけて紹介していくあたりはかなり期待が高まるのですが、実際に登場するヒロインたちはどこか記号的で見たことのあるようなキャラクターだったので少し拍子抜けしてしまいます。第三者である妹の視点では初対面のヒロインを紹介できないからこそ、ふとした言動で魅力や人となりを描いてほしいところです。視点人物を含めた登場人物たちのかけ合いも、ただ「会話をするための会話」になっていて情報量が薄く、なかなか記号的な特徴の先にある人間性のようなものが見えてきません。また、物語全体としては主に二人の視点から綴られますが、描き方に明らかな偏りがあり、二人目の視点を用意した理由が最後まで腑に落ちませんでした。今回のお話でいわば主役となる登場人物の視点に絞ったほうが構成としてすっきりしますし、多視点にするならいっそ全ヒロインの視点を書き分けるぐらいでもよかったのかなと。ここまで引っかかった点を挙げてきましたが、終盤に差し掛かると作者さんが登場人物や物語の核を掴み始めたのか、新しく登場するヒロイン、そして序盤では記号的に映ったヒロインたちの台詞に、人間性が垣間見えてはっとさせられるようなひと言が明らかに増えてぐんぐん読み応えが出てきます(講評なのでネタバレを避けてますが、メモしたいい台詞がたくさんありました)。このあたりからようやくヒロインたちの魅力が顔を覗かせてくるので、序中盤にももう少しその片鱗が見えるとラブコメとしての魅力も増すと思います。しかし、そうなると気になってしまうのは、なぜお兄ちゃんはこれだけ多くのヒロインたちに好かれているのか、ということです。そこがふんわりしているので、登場人物たちの焦燥感や切実な想いに乗りきれず、読んでいるほうまで第三者として距離を置いたところから物語を眺めている感覚に陥ってしまいました。せっかく第三者視点で描いている強みを生かし、説明ではなくエピソードで、お兄ちゃんが人を引きつける理由に説得力をもたせてほしいです。恋心を扱う以上、好きという結果あるいは答えだけを提示するのではなく、そこに至るまでの感情の変遷や言葉の裏に秘められた繊細な揺らぎをすくいあげてみてください。ラストでやりたいことは非常に明確でわかりやすく、ばちっと決まればラブコメとしてもエンタメとしても最高に気持ちがいいので、ぜひ「落差」をもっと意識し限界まで研ぎ澄ませてこのクライマックスを彩ってほしいと思います。
『銃×石——ガンセキ』
いい意味とあまりよくない意味の両面においてとても真面目で丁寧な小説だと思いました。まずいい意味においては、主となる二人の登場人物の導入から世界観の説明、物語の動き出しと展開、採掘や銃に関する解説、バトルシーン、終盤になれば伏線回収など、読者を置いてけぼりにしないよう一つひとつがとにかく丁寧に描かれています。丁寧とはいっても序盤から延々と説明を垂れ流すような類いの書き方ではなく、登場人物たちを動かし、会話をさせながら、いわば自然なチュートリアルのような形で物語が進行していくので、読んでいるこちらも外から連れてこられたヒロインと同じ速度で舞台となる島について理解していくことができました。一方、あまりよくない意味としては、最初から最後まですべてのシーンが等しく同じような真面目さと丁寧さで綴られているような印象を受けました。そのため、序盤では読者に対して親切だった丁寧さが、中盤あたりからは少しもたついて感じられるようにもなってきました。些細な日常から重要なバトルまでを真面目に丁寧に描くためか展開の緩急や抑揚に欠け、読んでいるときの体感時間がどこか一本調子でした。序盤の真面目さと丁寧さは間違いなく作品の美点ですが、読者があるていど世界観や物語に入り込んでからは流していい説明をさくっと流したり、バトル描写も重要度によって密度に差をつけたり、日常のささやかだけど大事なシーンはことさらゆっくりと間を使って描いたり、クライマックスの見せ場はあえて熱量と勢いで突き進んだり、シーンによって読者の体感時間をコントロールするともっと深く没入させられるようになると思います。また、これだけ丁寧さが際立つ作風であるにも関わらず、登場人物たちの心の動きだけはやや大づかみに感じられました。「この人はこういうことがあったからこうなりました」「こうしてもらったからこういう気持ちを抱いています」という説明としては現状でも充分に理解できるのですが、せっかくなら主となる登場人物たちの出逢いからこの結末に至るまで、互いに影響を与えながら少しずつ成長していく繊細な心の変遷を持ち前の丁寧さで汲みとってみてください。個人的な趣味嗜好もあるとは承知のうえで、とくに本作のように敵がアンネームドのクリーチャーである場合、どのような手段や過程を経て倒すか自体にそこまで興味はなく、そういう敵と対峙したときに生じる人間側の濃厚なドラマを読ませてほしいと思います。
『メタル&プラスチックマイハニー99』
非常に講評が書きにくい作品でした。まず冒頭の一章は最高に面白かったです。基本的に個性のある主人公が好きなのですが、言動も行動も倫理観もなかなかにエキセントリックでぶっ飛んでいて、だけどナゾに格好よく見えたりもして、これは面白い男だぞと期待が高まりました。とりわけ、ヒロインをドン引きさせて置いてけぼりにする主人公の言動から溢れるキレッキレのコメディセンスが素晴らしかったです。ここではネタバレを避けるためにぼかしますが、地下室へ行ってあれが起動して主人公が叫んでからのくだりは手を叩いて爆笑しました。さらにはそこから始まるバトルも構成としてテンポがよく、敵のキャラクターメイクや戦い方、ちょっとした台詞回しも非常に引き込まれるところがありました。このような理由から一章を読み終えた時点ではものすごく高評価で、この先この主人公がどんなに破天荒な活躍を見せてくれるのかワクワクしながら続きを読みました。ところが、二章に入って物語の本筋が進み始めると、まるで書き手が変わってしまったかのように主人公もまわりの登場人物もお行儀よく落ち着いてしまい、あまりよくない意味としてわりと真っ当で真面目で上手なお話が終盤まで続いてしまった印象でした。最後まで読めば作者さんがやりたかったことと僕が期待して読みたかったものがずれていなかったことも、その展開がハマったときの熱さもわかります。しかし、あのカタルシスを演出するためには一章で心を掴んでくれたエキセントリックでぶっ飛んでいて、だけどなぜか目が離せない主人公が壁にぶち当たって、悩んで、苦しんで、また立ち上がる様を描いてほしいなと思います。現状では一章の主人公と最後の主人公をつなぐあいだの主人公が、文字どおり「人が変わったように」悩んだり苦しんだりしているように見えてしまいました。なにより、文章で人を爆笑させられるコメディセンスというのは作家としてものすごく強い武器です。ずっと一章や最後のようなアクセルの踏み方をする必要はありませんが、要所にもう少し散りばめるだけでも「あのエキセントリックな一章の延長線上にいる主人公なんだな」という印象をつけられると思います。
いかに短時間で、いかに効率よく、いかに受け身かつストレスフリーで適度な刺激や心地いい楽しさを摂取できるかが求められがちな昨今のエンターテインメントにおいて、小説というのはものすごく足の遅い娯楽です。1冊を読み切るにはそれなりに時間がかかりますし、構成によってはいちばん刺激的で美味しい部分を味わうために数百ページ待たなければいけないこともあります。そもそも長い文章を読むという行為そのものが苦痛だという人も、きっと少なくはないのでしょう。だけど時間をかけてページをめくり、文章という限られた情報源から能動的に想像力を働かせて物語の世界に没入していくことでしか辿り着けない面白さや心をわし掴みにされて揺さぶられるような経験、人生観を丸ごと変えてしまうほどの出逢いがあると信じて、僕たちは小説を書き続けています。今回受賞された三人のみなさまもガガガ文庫の、ひいてはこれだけエンターテインメントが溢れる現代にあえて小説というオールドスクールな表現方法を選んだもの好きの仲間として、ともに歩み、切磋琢磨していきましょう。それぞれの作品がどんな改稿を経て、どんなイラストに彩られて、どんな装いで書店に並ぶのかを楽しみにしています。素敵な読書体験をありがとうございました。
編集部講評
第20回小学館ライトノベル大賞は応募総数1,310作品となり、昨年よりも150作品ほどの応募数増となり、最大の応募数を誇る第17回に迫る、過去3番目に多い応募作品数となりました。
昨今、どの出版社のラインアップも新人賞出身の作品ではなく、WEB小説の書籍化作品が増えている中、新人賞作品を重視する小学館ガガガ文庫を選んでいただいたこと、ひいては小学館ライトノベル大賞へのご応募いただいたこと、誠に感謝の念が堪えません。
数多くの賞がある中、弊賞へ沢山のご応募いただき厚く御礼申し上げます。
本年はゲスト審査員として、第13回小学館ライトノベル大賞《優秀賞》受賞作にして、テレビアニメ放送中の『千歳くんはラムネ瓶のなか』の著者である裕夢先生を迎えました。そして編集部と裕夢先生との厳正なる審査の結果、《優秀賞》3作品が受賞作として選ばれました。
受賞した各作品についての詳細は裕夢先生の講評にゆずりますが、今回は、作品のクオリティ・題材の目新しさなど、非常に甲乙つけがたい作品たちが集まりました。最終選考に至るまでの編集部内の過程について記せば、完成度の高い作品たちを前に、編集部内でも評価が真っ二つに分かれ、どの作品を選出するのか、編集部一同、それぞれに頭を悩ませました。結果として今回選出された受賞作の面々は、編集部の各担当の評価がぶつかり合い、さらに編集部とはまた違った観点から作品を見てくださった裕夢先生の評価が合わさった結果です。どの評価者が欠けても、同じ結果にはならなかったのではないかと思います。
今回受賞した3作品は、担当編集がついて推敲と改稿を重ねたうえで、7月から順次刊行される予定です。それぞれ甲乙つけがたい作品群の中で、担当する編集者へヒットの片鱗をみせた作品たちに、ぜひご期待ください。
また、最後になりましたが、すでに第21回小学館ライトノベル大賞も募集を開始しております。記念すべき第20回のゲスト審査員には、第13回小学館ライトノベル大賞《ガガガ賞》《審査員特別賞》受賞者であり、『夏へのトンネル、さよならの出口』『小説 葬送のフリーレン~前奏~』の著者である八目迷先生をお迎えすることになりました。人気作を多数生み出している八目迷先生の力をお借りしつつ、引き続き新しい才能を発掘すべく、編集部一同で取り組んでまいります。