それぞれ違う視点を持つ審査員が、得点形式で選考を行い、誰か一人の意見が突出することなく、編集部の方針もふくめた総意をもとに終始スムーズに議論された。新レーベルの創設を背景とした選考であったので、選考の結果が今後のレーベルのカラーに影響を与えるという緊張感があり、それが良い方へ働いたのではないかと思う。
大賞に選ばれた『愛と殺意と境界人間』はテーマを明確にしようとする努力が土台となって技術や遊びを発揮しやすくしている。この受賞を機に、物語の段落についての思考を鍛えることで、より深いものが書けるようになる。二十代になったばかりの若さにも期待が持てる。ガガガ賞の『学園カゲキ!』は、学園ものに軽いひねりをくわえた軽快さが売りになっている。大きな仕掛けが最初から仕組まれているということをもっと意識し、物語の段落を工夫すれば、何倍も楽しめるものになる。大賞・ガガガ賞と、陰陽両極端の作品が選ばれた。ぜひ今後のレーベルの幅を大きく広げるような作品を書いていって欲しい。
佳作の『携帯伝話俺』および『Re:ALIVE ~戦争のシカタ~』は、それぞれアイディアに光るものがあったが、それらの活かし方に難がある。文章の遊び、セリフのやり取り、いわゆるライトノベル的なバトルに終始するのではなく、物語作りを意識すれば、より良い作品になる。どちらも今後の成長に期待したい。
期待賞で全ての作品に共通するのは、書き手が、自分の作品の物語性を意識せずに書いているということ。どれだけ光るアイディアがあり、キャラが魅力的でも、次に何が起こり、何が発展し、最終的にどうなるのかということへの責任が薄ければ、せっかくの仕掛けや意図も活きてこない。むしろ苦心して折り込んだアイディア群が互いに齟齬をきたし、水と油のように分離してしまう。破綻を恐れずに熱意を込めて書くことは大切だが、自分のアイディアに責任を持たず、逃げ場を探すような終わらせ方は、自ら厳に戒めて欲しい。未熟であることは決して悪ではない。というより当然である。だが、未熟であることを意識せずに済むような書き方は、本人にとってもそれを読む側にとっても、百害あって一利もない。書き続けることで、今日は分からなかったことが、明日は分かるようになる、そういう単純な努力を無限に反復できる心を、何より手に入れて欲しい。
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