このたびの選考も、審査員それぞれの評を汲みつつ、編集部の意図も汲みつつ、広範囲にわたり議論が行われました。
『僕がなめたいのは君っ!』は、まだまだ完成度やテーマの広さについて難点が指摘されつつも、それらを克服してふんだんにニーズや新奇なアイディアを取り入れたものに仕上げることができ、より優れたものになるという期待をもっての授賞となりました。
『コピーフェイスとカウンターガール』は奇抜なアイディアに大真面目に取り組んで一つの作品に仕上げたこと、作品自体が新たなネタ(パターン)を提供できることが評価されました。アイディアの新鮮さを保つ工夫次第でより面白いものに仕上がるはずです。『七歳美郁と虚構の王』は特異な舞台を描くとともに、独特の青春ものに仕上げようとしている姿勢が評価されました。人物造形と交流のあり方に欠点が集中していることから、逆にそれらを克服し、よりエンターテイメント性の高いものに仕上げて欲しい作品です。『どろぼうの名人』は雰囲気モノとしての色調を作り上げようとしている点が評価されました。人物の心情の中に物語が溶け込んでゆく有り様をもっと強めることで、事件が起こることを期待する以上に、その世界に浸る気持ち良さを提供できる作品になるはずです。
『魔王を孕んだ子宮』は独特な設定の構築を柱にした作品作りをしている点が評価されるも、構築が足らず、矛盾しているような何かが足らないような印象を与えることから期待賞となりました。逆にその難点を克服しさえすれば飛躍的に向上しうる作品です。
総じて、欠点が明白である作品が増えたことは喜ばしいことだと感じました。ある程度の実力がつかない限り、これだという欠点は見えてきません。逆に欠点さえ見えれば、それを克服することで次のステップに容易に辿り着けます。これからも応募作全体のレベルはゆるやかに上がっていくでしょう。恐れずに自分の作品の欠点を見つけ出し、全力で克服することが、授賞への最短の道のりです。今回の授賞を残念ながら逃した方々も、ぜひ今後とも力作に取り組み、授賞へのステップを上っていただければと思います。
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